合格者数1781人に
2023年11月8日、司法試験の結果が発表され、合格者数は1781人にのぼった。ここ数年は1400人台で、年々減少していたところ、久しぶりに1500人を突破し、大幅な増員となった。
合格者数が増えた理由は、今年から法科大学院の最終学年在籍者の受験 (在学中受験) が認められるようになったことによる。つまり、合格者数が変わらないと、新たに在学生で合格する人の数だけ、修了生の合格者数が削られることになる。その結果、従来であれば合格できた人が合格できなくなり、修了生に不利益が生じる。これを避けるため、合格者数が増員されたと考えられる。ちなみに、合格率は、昨年が45.5%だったのに対し、今年は45.3%と、ほとんど変化がなかった。
強かった在学生
特筆すべきは、在学生の合格率が59.5%と、非常に高かったことである。これは、修了生の32.6%を大幅に上回っている。
合格者数でも、在学生の方が修了生より多かった大学が5大学、同数が1大学ある。
これまでも毎年、法科大学院を修了した年に初めて司法試験を受験した人の合格率が、受験2回目以降の人より高いというデーターがあった。このことから、ある程度予想されていたとは言え、 「やっぱり在学生は強かった。」 との実感を強くした。ちなみに、昨年 (2022年) の司法試験で1回目の受験者の合格率は55.1%だった。これよりも、今年の在学生の合格率は高い。
問われる法科大学院教育
在学生は、現在まだ法科大学院の教育を受けつつある、いわば未完成の人材である。その人が、法科大学院教育を完全に修了した人より合格率が高いということは、何を意味しているのだろうか。
司法試験の合格は、法科大学院教育の成果とは直結しないということだろうか。結局、優秀な人が合格するというだけのことなのであろうか。
いずれにしても、法科大学院制度の生き残りをかけて実施された在学中受験制度が、法科大学院教育の存在意義に疑問を投げかける結果になったことは、皮肉というほかない。
100%近い予備試験合格者の合格率
今年も、予備試験合格者の司法試験合格率は92.6%と、非常に高かった。
これは、予備試験が司法試験とほとんど同じような内容のものであること、予備試験の合格者が極めて少数に絞られていること (2022年の合格率は、3.6パーセント) から、ある意味では当然の結果とも言える。
最近では、予備試験に合格した人は100%近く司法試験に合格するのであるから、同じような試験を2回も受験しなければならないというのは無駄ではないだろうか。
もっとも、2003年3月28日の閣議決定 (規制改革推進3カ年計画) は、 「新司法試験の合格率において予備試験合格者と法科大学院修了者との間で可能な限り差異が生じないようにすべき」 と決定している。現状は、両者の間に大きな格差が生じており、上記閣議決定に反した事態になっている。これを是正するためには、予備試験の合格者数を大幅に増員して、予備試験合格者の司法試験合格率を下げなければならない。そうすれば、予備試験と司法試験の2回受験を強いられることも、無駄とは言えなくなる。
旧司法試験の復活を検討すべき時期ではないだろうか
いずれにしても、現在の司法試験制度は様々な矛盾をはらんでいる。このまま小手先の 「改革」 を重ねても、制度疲労はますます重なるばかりである。
旧司法試験を復活させ、受験の資格制限を撤廃する。法科大学院は、各大学の法曹養成コース (これまでも 「法職課程」 等があった) に衣替えする。これが、最も現実的で適切な抜本的改革案ではないかと思う。